Cembaloおもしろ話
(フィートのお話)
Cembaloは電子オルガンのように、一つのキーで色々なピッチの音を出す事が出来ます。
鍵盤がPianoのように1段しかない場合でも、レジスターの操作によって、実際のキーの高さの音よりもoctave上の音を出すことが出来るCembaloもあります。
そういった音の高さの事を「列」という言い方をします。
1段鍵盤で一つのピッチしか出ないものは「1列」と言います。
通常、一段鍵盤でも、2列の音を持っている場合には、もう一つの列は、同じピッチではなく、そのキーに対してoctave上の音を出すようになっているのが一般的です。
私達の教室のルッカースモデルの一段のCembaloは、音列は2列ですが、orchestraやトリオソナタの演奏のために、音量を出すために、octave上の音ではなくって、同じ高さ、所謂、同度になっています。
私達はキーに対して、そのキーの音の高さと同じピッチを出す場合を、私達は8フィートと呼んでいます。当然octave上の音がする場合には4フィートで、octave下の場合には16フィートと呼びます。
Baroque時代の標準の2段鍵盤のCembaloは、上の鍵盤が8フィートで、下の鍵盤が8フィートと4フィートになります。
それに対してアンマーやノイペルト等のモダンコンサートCembalo(大型Cembalo)は上の鍵盤が8フィートと4フィート、したの鍵盤が8フィートと16フィートの4列あります。
ここで言うフィートと言う言葉ですが、勿論、フィートとは(feet)で (foot)の複数形で、 約30.48cmを表す事は言うまでもありません。ですから、8feetは234.84cmです。
しかし、このフィートと言うのは、あくまで、ピッチを表すための便宜上の言葉であって、正式な長さを示すものではありません。
ピッチは弦の太さや張力によって変わるので、標準の高度(音の高さ)を出すのに8フィートである必要はないのです。
ある音楽大学のCembalo科の生徒が、Cembaloの弦長が8フィートあるものだと勘違いをして、幾らそこの所を説明をしても分って貰えないで困ってしまいました。
Cembaloによってサイズはまちまちだし、当然弦長もすべて違うので、このフィートという呼び方はCembaloやパイプオルガンなどの共通した、ピッチを言い表すための便宜上の呼び方であると言う事なのです。(ちなみに、パイプオルガンでは32フィートや64フィート、或いは逆に2?と言うフィートまであります。パイプオルガンでは実際のキーよりも10度高い音やoctave+5度高い音を出すストップ(音栓)まであるのです。)何故、実際の音の10度やoctave+5度の音が出るようになっているのかというお話は倍音率のお話をしなければなりませんので、ここでは省略しておきます。