一般論として書かれているので、古楽器を演奏している立場としては、舌足らずの印象を拭い切れないので、追記して起きます。

現代のbaroque‐periodの演奏では、通常、A=415、392、440、466(Hz)が、使用されます。
また、その他のpitchとしては、430(Hz)のpitchもよく使用されます。
結論から言うと、どの時代、どの国の、どの楽器(Pipeorgan等)の楽器が、何という名前のpitchであるか??・・という事は、未だに、詳しく調べれば調べるほどに、藪の中・・と言う事が出来るでしょうか??

つまり、baroque時代のpitchは、定義されてはいなかった・・というのが結論なのですよ。
ですから、私達は、そのpitchが何と命名されているのか??という課題に常に付き纏われているのですが、結論的には、一般的な通り名として、覚えている事を推奨します。

A=466のヴェネチアン・ピッチだと聞いていたのですが、多分、移調高度として使用されていたと思います。ブラス楽器ならば兎も角として、弦楽器の場合には、gut string(ガット弦)では、切れてしまいますので・・考えられませんので・・

A=442(Hz)日本では、一般的に演奏会用高度と呼ばれているpitchで、世界中のOrchestraがこの高度で演奏されているように、勘違いされていますが、これはあくまでも日本の音楽界の中での演奏会用の高度なのです。日本では、特殊なbaroque楽器を除いては、A=440の標準高度の楽器と、A=442の演奏会用の高度の2種類の楽器が売られています。
但し、先程もお話したように、これは日本国内のお話なので、日本のOrchestraの場合には、NHK交響楽団を始めとして、、殆どのOrchestraが442Hzを採用していますが、アメリカは低めの標準pitchである440Hzが一般的です。
しかし、Europa(ヨーロッパ)、特にドイツ・オーストリアでは444(Hz)や445(Hz)で演奏されているようです。有名なBerliner Philharmoniker(ベルリン・フィル)やWiener Philharmoniker(ウィーン・フィル)も、444(Hz)ぐらいを採用しています。(Berliner Philharmoniker(ベルリン・フィル)はHerbert von Karajan(カラヤン)時代は446Hzで演奏していたと言われています。)


A=440(Hz)は、現在一番、標準とされるpitchなのですが、そのpitchが制定されたのは、非常に新しい時代なのですよ。
所謂、国際標準pitchとして、 A=440 Hz という基準ピッチが国際的に基準として提唱されたのは、1939年5月12日にロンドンで開催された5ヶ国(イギリス、ドイツ、フランス、オランダ、イタリア)の専門家による会議においてです。そのわずか4ヶ月後には第二次世界大戦が勃発しました。それぐらいの時代背景なのです。勿論、baroque‐時代や古典派の時代とも関連はしません。それを前提においておいてください。

A=435(Hz)  (A5=870 Hz)Franceの標準pitch 
1859年にはフランスの政府と物理学者や音楽家からなる委員会によって A=435 Hz (A5=870 Hz) がフランスの公式な基準ピッチに定められました。
但し、Europaの多くのRecorder等の楽器は、このA=435のpitchで作成されています。一般的な古楽器のpitchになります。


A=415(Hz)を通常はbaroque‐pitchとしています。
A=392(Hz)は通常、Versailles・pitch(ベルサイユ・ピッチ)とされています。勿論、異論は色々とあるようですが・・、例えば実際にヴェルサイユで392ヘルツぴったり!が使われていたわけではありません。・・・そこに足を突っ込むと、藪の中です。











単純にpitchと辞書で引くと驚くほど色々な意味が出てくる。ボートの人の一分間にオールを漕ぐストロークの回数を意味するピッチ、野球の人の打者に向かって球を投げることを意味するピッチ(ピッチング)、はたまた石油や木炭を蒸留した後に出来る固形の物質もピッチという。山登りなどで坂道の傾斜を表すピッチもある。一般的なのは作業能率を表すための言葉かもしれない。しかし、我々音楽家がピッチと言った場合には音の高低を表す。「ピッチが高い。」とか「低い。」とかだ。

リコーダーなどを買い求めに行くと、よくピッチが違うことがある。リコーダーの場合には、基本的には440サイクルの標準ピッチと435サイクルのバロックピッチが殆どだ。

家庭のピアノを調律する時、調律師から「いくつにしますか?」と聞かれることがある。こちらが何も希望を出さなければ、殆どの調律師は440サイクルで調律するのではないだろうか。我々が文化会館などのコンサート・ホールで発表会をする時、会場のピアノにピッチを合わせてヴァイオリンやチェロなどをチュウニングするのだが、教育会館などの特殊な所を除いて、殆どの会場のピアノは442〜443に調律されている。(教育会館などのように学校が使用するという前提に立っているところは、440の標準ピッチである。)市販の木琴や鉄琴などの楽器の場合は440サイクルと442サイクルの楽器が販売されている。

440サイクルは国際標準高度とされているが、実際に(オーケストラなどの)演奏会では443サイクルが一番多い。ということで私達の教室のピアノも443サイクルの演奏会高度で調律をお願いしている。というわけで私達の教室の生徒サン達も443で調律している。

「たかが1サイクルや2サイクル変わった所で何が変わるんだ。」と思われるかもしれないが、これが(ピッチが変わると)全く(音楽が)別物になっていくのだから始末に悪い。

梅雨の時期などに子供達とオケ練習をしている時、空気が重たくて(雨が降りそうで降らないどうしようもない天気で)子供達の音楽の乗りも最悪な時、「じゃあ、今日は気分が乗らないから444でやろう。」といってチュウニングをしなおすと子供達も見違えるように生き生きとなってくる。

じゃあ、最初から444でやれば問題は無いように思いがちであるが残念ながらそうは行かない。やっぱり443は443であって、444ではないのである。

楽器の中で、ヴァイオリンなどの楽器の場合にはフレットのようなものがついていないので、自由に(少し高目とか、低めにとか)ピッチが取れそうなものであるがそうでもない。

あるとき、オケマンに頼まれて彼のヴァイオリンを修理している間私のヴァイオリンを貸したことがある。オケマンであるに関わらず、彼の標準高度は440であった。つまり子供の頃から440で習ってきたわけだ。

一月経って私のヴァイオリンが帰ってきたとき、ヴァイオリンが全く鳴らなくなっている事に驚いてしまった。楽器が440の時に響くようになってしまったのだ。指は無意識に一番響く場所を求めてしまう。しかし耳は正しい高度を要求する。大変なことになってしまった。又一から楽器を調教しなおしだ。何年越しでせっかく響くようになっていたので少なからずショックであった。

楽器は絶対に他人に貸すものではないということを改めて実感した。

ピッチに関しては音大時代に結構興味を持って調べたことがある。当時としては最先端の資料を集めてまとめたのだが、結局1980年代に差しかかってバロック時代の楽器やガット弦などが再現されるようになって、それまでの常識的なことが覆されて、私の勉強してきた知識は何の役にも立たなくなってしまった。(小中高校で学んできた歴史上の知識が何の役にも立たなくなったように)

私の一貫した理論である「様式は時代の技術力で決定される。」という法則通り、当時の技術の再現が正しい知識を我々に与える。

バロック時代には殆ど村々の単位でピッチが異なっていた。それは村の教会のパイプオルガンが、村にとって一番権威のある物であったからである。つまり音楽を提供していたのは殆どの場合教会である。貴族もと思われるかもしれないが貴族が村民に音楽を提供すると言う事は、まだ貴族階級の力が強く、17世紀や18世紀までは例外的にしかおこなわれていなかった。ジプシーや村祭りで演奏される以外は毎週のゴッテスディンストとして提供される音楽が唯一の村民の娯楽であった。というわけで当然、村で作られる金管楽器はパイプオルガンのピッチによって決定されていたのだ。金管係の楽器は高音の方が響きが良い。だからバロック時代はピッチが低かった、というのは迷信であって、当時448というとてつもない高いピッチを持つ町もあったことは良く知られている。

それに対して弦楽器は切れやすいガット弦に悩まされていたことは事実である。だからガンバやリュウトなどの楽器の場合「その日に一番良く鳴るピッチにチュウニングする」というのは全く正しい。当然ガット弦は(今でも)高価なわけだから、なるべく弦を切らないように演奏するにはある程度低いピッチで演奏した方がよい。しかし、弦楽器もあまり低くすると鳴りが悪くなる。ある程度の高度は必要である。

もう一つのバロックピッチである415サイクルであるが、これは現代になって、チェンバロなどがオーケストラなどで使用されるようになって、モダンピッチとバロックピッチの弾き分けの必要が生まれた。しかし、ヴァイオリンにしてもチェンバロにしても曲ごとにピッチを変えていると弦のみならず、楽器にとって非常に良くない。(最悪の場合、楽器が壊れてしまう)ということで鍵盤をスライドさせることによってバロックピッチを持ってこようということで出来た便宜上のピッチだ。つまりA(ラの音)を440で調律すると、鍵盤を半音下げてGis(ソ♯の音)の所にAの鍵盤をもっていくと、Aの音は当然415サイクルになるということだ。(私達の教室のように)Aを443でチュウニングする場合は、バロックピッチでは418サイクルになると言う事です。当然スライド鍵盤は電子楽器ではトランスポーズというキーで全く同じように操作できます。

私達が実際に演奏活動をして感じた結果では、バロック・ヴァイオリンでも、415では楽器の鳴りが少し悪いようで、430とかの方が楽器が良く鳴るようです。でも、一台一台楽器が異なりますので良く響くピッチも一台ずつ変わってしまいます。