チェンバロ譜作成について
芦塚先生の問いかけから
オケリハーサルを1週間後にせまったオケ練習の日にでした。芦塚先生が、ディッタースドルフのオケ練習でスコアを見ながらチェンバロのパートをすらすらと弾きました。そして、『簡単だよ。おーい、だれかスコアでチェンバロを弾ける人はいないか?』という問いかけから、チェンバロの譜面作りがはじまりました。
実は、本日2部の17番に演奏しますディッタースドルフ作曲ヴァイオリンコンチェルトは、出版されていた楽譜にチェンバロ譜がついていなかったので、チェンバロのパートは弾けませんでした。
このようにバロックから古典派の作品で本来チェンバロが入るべきなのに、チェンバロ譜が出版されてないという楽譜がたくさんあります。なぜかというと、オーケストラの楽譜はプロのプレイヤーを対象にして出版されているので、チェンバロのパートは原則として出版されていません。
本来はチェンバロのパートは、作曲者が通奏低音奏法で、(つまりチェロのパートを左手に、右手はスコアから和音を読み取って、)即興で伴奏を演奏したからなのです。
オーケストラのチェンバロのパートは、チェンバロ・コンチェルト以外は、作曲者が最初から書くものではありませんので、チェンバロ譜が付いている楽譜は、そのチェンバロのパートを校訂者がパート譜として作曲をしたものなのです。
ですから、イタリアのリコルディ版等も、スコアーには、実に下手なチェンバロ譜が印刷されていて、パート譜は全く別人のアレンジの譜面になっているケースが多いようです。
という事で、余りにも酷い場合には、芦塚先生が、堪り兼ねて、チェンバロ譜を作ってから、子供達が演奏しているわけです。(本日の1部、2番のヴィヴァルディ作曲チェロ・コンチェルトやバッハの二台のヴァイオリンのためのコンチェルトも芦塚先生の作曲です。)
ディッタースドルフですが、今までも何度か発表会で演奏しましたが、古典派の作品だからチェンバロが入った方が、華やかで良いのですが、芦塚先生の仕事も多様にわたっているので中々その時間を取る事が出来ないので、今回もチェンバロは入れないでという予定の中での芦塚先生の呼び掛けでした。
だだ、普通になんとなく。
専科生のチェンバロ担当のA君、Mさん、Tさんは、芦塚先生の問いかけに、興味深々の様子でした。
では、試みに最初のトゥッティ(オーケストラが、ソロが始まるまで全員で弾く最初の部分)だけ3人で分担して、五線紙に書いてみようと宿題にしました。牧野先生からは、「左手はチェロと同じで、右手はスコアから合う和音を書いてきて」と言っただけでしたが、Mさんは「あー、わかるかも」と言ってましたし、みんな軽く引き受けて帰りました。次のレッスンでそれぞれ提出しました。芦塚先生に見て頂いたら、なかなか上手に出来ていたのです。A君は、試験中にもかかわらず約束の期限までにしあげました。Mさんは、スコアをみて書かなくても弾けるかもといいながら、次々と弾いたので、いつの間にこのような力がついたのかな?と驚きました。和音を組む時、決まりがあります。ホントは和声学という勉強をして覚えていくことなのですが、空3和音とか、重複してはいけない音とか、難しいきまりがあるのですが、弾きながら『ちょっと違うかも、こっちかな』といいながら、耳で正しい和音を決めることができてました。音大で和声を勉強して、チェンバロ科に入って、レッスンを受けても、そういったチェンバロの基礎を学ぶ事は日本ではありません。
それを、だだ、いつものかんじで、なんとなく出来てしまった3人には本当に驚きました。
芦塚メトードとは
よく「芦塚メトードとはなんですか?」 と質問されるのですが、一言では説明出来ずに困るのですが、芦塚先生のおっしゃる通りに勉強すると、何故か、「普通に、なんとなくできてしまう」ということを改めて、感じた瞬間でした。
パソコンもまかせた
A君より、「手書きの後、どうするの?」と尋ねられました。
教室の通常の作業では、次の行程は、フィナーレという出版社が使用している楽譜を印刷するソフト、(ノーテーションの専用の音楽ソフト)を使い、パソコンに入力して出版譜と同じように印刷しますが、これがまた、大変な手間なのです。しかし、せっかく3人が頑張っていたので、ノーテーションを仕上げたいと思いましたが、発表会まで時間がありません。東京の事務所にしか、フィナーレの入力のための環境がないので、先生方が入力する時間は全くありませんでした。
そこで、急きょ入力に必要な鍵盤キーボードを、芦塚先生が、わざわざ、Midi楽器の専門店に出向いて、Midiキーボードを買ってきて頂き、3台のパソコンに千葉の教室で入力できるように、finaleのソフトをインスツールするとかの環境をととのえてくださいました。
そして、急きょ日曜日の練習の合間に、3人に芦塚先生から入力のレクチャーをお願いしました。全音や音楽の友社等の音楽の専門の会社が使用するソフトですから、finaleを使いこなせたら、即、仕事として稼げます。
それ程、難しいソフトなのですが、芦塚先生から、簡単に説明しただけで、あと分からなかったら質問するように(先生もレッスン中でしたから)、と言っただけだったそうですが、初めて左手を完成させたのです。
この順応のよさ、要領のよさにもまた驚きました。
楽しく、しかも責任を持って協力
その後、今度は3つあるソロの部分の右手を3人に分担して、五線に書いてくる約束になり、パソコンに各自分担して入力して、完成出来るという目途がたちました。入力は、レッスンの前後にしました。分担は決めたのですが、作り上げるという責任感が強く、分担箇所にかかわらず、どんどん先へ進めていたり、間違いを手直ししてあったりして、楽しそうに作成していました。そして、芦塚先生に最終チェックをして頂き、斉藤先生にレイアウトして頂いて、発表会の2週間前に完成しました。3人は、意欲的に取り組み、何より楽しそうでした。さっと準備や後片付けも、指示なしでできます。
あとは本番を
本番では、A君がチェンバロをひきます。MさんとTさんは、すでにコントラバスで出演が決まっていましたので、本番2週間前にこの大曲のチェンバロを弾くことになったのです。先生達からは、「自分達が作ったわけだから、弾けるでしょう?」とこれまた、この教室ではまるで普通の会話のようですが、これは芦塚メトードならではの話なのです。A君がんばって演奏してくださいね。
3人からの感想です
3人で分担した時は本当にできるかと少し心配でした。チェンバロの楽譜を作るというのは今回初めてで、でも、家に帰りスコアを見て考えていると、低弦の音に合う和音がわかってきて、だんだんコツもつかめ、スムーズに作ることができました。その後のパソコンとキーボードでの入力の作業は、レッスンの時間より早く教室に行ったり、レッスンが終わった後に残って進めました。
その作業は、思ったよりも楽しくて、時間はかかったけれどスムーズに進みました。
入力が終わって、先生が「早いじゃん」とほめてくれて嬉しかったです。
完成して、印刷した楽譜をもらった時は、3人で作りあげたという達成感を感じました。実際に演奏するのは自分ではないけれど、自分たちが作った楽譜が発表会で演奏されると思うと、とても嬉しいです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ M.E
今回、ピアノ組3人でチェンバロ譜の作成をしました。今までオーケストラでチェンバロパートを担当したことはありますが、スコアから音を読み取って和音をつくるというのは初めてでした。また、和音をつくるだけでなく、リアルタイム入力というピアノのキーボードを使ってパソコンに入力する作業もしました。つくった和音をその通りにピアノのキーボードで弾くとパソコンに入力されます。しかし、楽譜通りに弾いたつもりでも、しっかり音をのばしていないと休符が入ってしまったり、1つ1つはっきり音を出さないと、音が抜けてしまったりしてとても時間がかかり、大変でした。完成した時は、嬉しいという気持ちと、やっと終わった、という達成感がありました。なかなかできない経験なので、とても良い勉強になったなと思っています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・T.O
今回のチェンバロ譜作成は、左手のパートはチェロの音を写し、その左手に合う音を右手の和音にしました。
特に、譜面作りは大変でした。フィナーレという譜面作りのソフトを使い、約300小
節分の譜面を三人で作りました。
譜面は、オーケストラの譜面を一つに凝縮したような譜面になっています。
三人でとはいえ、個々に音を考える所から譜面を完成させるまで時間がかかりました。
今日は僕が演奏します。是非チェンバロの音も聞いてください。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・A.N
ピアノコンチェルトは、フル・オーケストラなので、当然演奏するには管のパートが必要です。
しかし、アマチュアのオーケストラの奏者では、相当に練習を積み重ねないと、演奏が非常に難しいので、以前、試みに、音楽大学の学生で学校のオケに参加している学生をバイトで雇って、教室の練習にも参加させて、発表会で演奏したことがあります。
残念ながら、教室の練習に真面目に参加したのは、音楽大学のAオケの生徒だけで、Bオケの生徒達は、「子供の練習だから」、となめてしまって練習にも真面目には来ませんでした。Aオケの生徒は「この曲は幾ら練習しても、難しい。」と感想を漏らしながら、真面目に練習に参加していましたが。
当然、本番の演奏は、芦塚先生が幾ら合図を送っても、その合図で入って来れない・・という、惨憺たるものでした。
お金はちゃっかりと、チャント取っていったのだけどね。Aオケの生徒だけ、しきりに「ごめんなさい!」と謝っていたのですが、Bオケの生徒達は、自分達がメチャメチャだったという意識もないようでした。
プロのオーケストラの人達なら兎も角も、MozartやBeethovenのconcertoは、本当は、かなり難しい水準の曲なのですよ。
という事もあって、アマチュアオケや学生オケの人たちに、管のパートを演奏させるのは諦めて、菅のパートを複数のキーボードに分けて、教室の生徒達に演奏させる、と言うアイディアは、Pianoの生徒達の演奏の場が広がるという事から、昔から芦塚先生が提唱されていたのですが、曲によって、最低幾つのキーボードが必要か、とか、PA(音響装置)の問題とか、或いは、管のパートをキーボード用に編曲する手間とかで、中々難しい問題があって、実行には至らず、何時も先生が管のパートを担当していました。
そういった事情もあって、今までは、Mozartのピアノコンチェルトの20番 ニ短調、23番 イ長調、と今回の24番ハ短調を、芦塚先生が管パートをキーボードに直した譜面を使用して、発表会で演奏していました。
所が、今回のモーツアルトのピアノコンチェルト24番の管のパートをキーボードにアレンジした譜面が、紛失して見つかりません。
そこで、芦塚先生の提案で、キーボードのパートを、二人のPianoの生徒に、アレンジの仕方を直接、レクチャーして、本人達がスコアーから直に演奏をする事にしました。
勿論、クラリネットやホルン等の移調楽器も移調のコツを指導して本人達がそれぞれの楽器を分担して演奏しています。今回は教室としては管のパートの楽譜を作らずに、スコアーに自分のパートに色を塗っただけのものを使って演奏しています。専門家がそれを見たらギョッとするような、とてつもなく凄い事をやっているのですが、聴きにいらしたお客さん方は何が凄いのか、聴いているだけでは分かりませんよね・・・・・・。ひょっとして弾いている本人たちもすごいことをやっているとは気づいていないのかも・・・・・?
(一部ホームページより転載いたしました。)
当教室では、5年生になると、発表会の裏のスタッフの勉強も教育の一環として行っております。これまでは、先生方が作った発表会の進行表を読み取り、リーダーが下級生を指導して、発表会を進めて行くという形で、進行の勉強をしてきました。今回からは、なんと!進行表を「作る」ところから子供スタッフが挑戦しました。
芦塚先生のアドバイスで、希望者は、先生方の指導のもとに、実際の発表会の進行表作成の手順を習い、パソコンの基礎を習って、入力まで行いました。(下の写真、手前は楽譜作成ソフトの入力、奥は進行表の入力をしているところです。)
なぜ音楽教室でパソコンを教えるのか?それは、芦塚メトードでは音楽の指導のカリキュラムも、パソコンの指導カリキュラムも根本は同じだからです。エチュード(練習曲)の考え方を例にお話しを進めると、少しはそれが分かっていただけるかもしれません。芦塚メトードでは、パソコンの指導の場合にも、音楽のレッスンの時と同じように、教科書的な指導教材を使用しないで、実際の教室の業務の中で指導をします。面白くない型の練習ばかりのような(計算問題のような)教科書は使用しません。それと同じように、教室では、(音大受験を希望する生徒を除いては)通常のレッスンでは、子供達のカリキュラムにはエチュードを使用しません。
それは、何故か?という、教室の主張は、ホームページにも、「エチュードの意味」と言うお話で掲載していますが、勿論、その理由は幾つかあるのですが、その内の最たる理由は、本当にエチュードに含まれている技術をマスターするには、その中の1曲、2曲をマスターするのでも、最低でも半年厳しい練習に耐えなければならないからです。それを常識的に考えて、計算してみると、Czernyの30番から、50番迄のエチュードを完全に練習して、その技術をマスターするには、30曲、40曲、50曲で120曲の曲をマスターしなければなりませんから、それだけでも60年の歳月が必要になります。しかも、エチュードはCzernyだけではないのです。クラマーの60のエチュードやケスラー、モシュレス、モシュコフスキーやクレメンティーのエチュード等があります。
これ等のエチュードは、教室から音楽大学に進学した生徒が、実際に勉強をした曲を羅列したものです。
エチュードが課題曲にある音楽大学に進学するのならいざ知らず、それを一般の生徒達が勉強させられるという事は、非常にあほらしい!!
では60年も掛かるエチュードを一般の教室ではどういう風に指導しているのでしょうか?
60年ではとても、とても、という事で、一般の教室ではCzerny30番のエチュードでも、1曲を2週間から、3週間で合格にします。1週間毎のレッスンに持って行くエチュードを2曲ずつとすして、確実に3週間で合格するとしても、1年半は掛かる計算になりますよね。しかし、それでは、余りにも雑な練習過ぎて、Czernyが意図した技術をマスターさせる事は出来ません。
雑でいい加減なレッスンをするのなら、させない方がまだましだ。という事で、教室ではエチュードを教室のカリキュラムとしては指導しません。
勿論、音楽大学を目指したり、コンクールを目指す生徒達はそのカリキュラムにエチュードが含まれるので、当然指導します。
また、特別にエチュードを指導してほしいとの希望があった場合にも、雑な指導はしない、という条件の元に、指導します。
エチュードを希望する生徒の場合には、まだ初心者の場合には、私はCzerny30番を二回練習させます。
一回目に暗譜や技術の練習をして、2回目にはin tempoで演奏させます。
同じ曲を二回練習するのを嫌がる生徒の場合には、一回目はCzernyの小さな手の為のエチュードを課題にします。二回目に30番のエチュードをin tempoで演奏する事が出来たら、Czernyの40番の課題は飛ばす事が出来ます。
音楽大学に進学を希望する生徒やコンクール組みの生徒には、当然、エチュードやBachのカリキュラムが入ります。
しかし、一般の生徒の場合には、エチュードの内容を勉強するのには、エチュードは必要はありません。何故なら、曲の中にはエチュード的な要素は必ず含まれるからです。
エチュードの様な無味乾燥なフィギレーションを、音楽的にこなせるようになるには、それ相応の目標と意識が必要だからです。ヨーロッパでは基本的にはエチュードは使用しません。
それはヨーロッパでは、エチュードはピアノを勉強する生徒の劣っているテクニックの治療薬としての意味があるからです。私達もエチュードをそういった意味で、抜粋して使用することはよくします。
でも、あくまでも、本人が不足しているテクニックや弱い技術をマスターさせるための、治療薬としての使用法です。
という事で、教室では、エチュードを使わずに、実際の曲の中で基礎を指導します。ただ、この方法は、「本当に子供がどこが分っていないのか」が、分らないと出来ない指導法なのです。こういったやり方は、音楽の分野だけでなく、すべての分野に芦塚メトードとして応用されています。パソコンの指導も同じで、今回のパソコン作業も、実際の発表会の進行表作成を生徒たちの教材につかって、進行表の内容の決め方や、パソコンの基本的な入力の仕方を中心に指導しました。「なぜ音楽教室でパソコンを教えるの?」と、疑問に思う方もいらっしゃるかもしれませんが、教室では「これからの音楽」を勉強する上での最低限必要な基礎知識として、パソコンのレクチャーをしています。音楽教室の範囲を逸脱したものではありません。勿論、パソコン入力の時間も本人達の希望の時間内で行いました。
以下は、実際に子供達がやったことを本人たちが書きました。進行表の具体的な中身のタイトルが書いてありますので、一般の方には何の事だかわかりにくいかもしれませんが、あえて生徒さんたちが書いたそのままを載せることに致します。
子供スタッフ やったこと
T おもて進行のパソコン入力
コメント用紙作成
M おもて進行のパソコン入力
裏進行のパソコン入力
TM おもて進行のパソコン入力
コメント用紙作成
メリーゴーランドの待機のパソコン入力
お弁当シール パソコン入力
RN 4年生以下出番の表の入力
メリーゴーランドの待機のパソコン入力
カンタータ後の誘導の入力
片付けチェック表パソコン入力
お弁当シール パソコン入力
SK 片付けチェック表パソコン入力
CN スタッフやったこと一覧表のパソコン入力
YK お弁当シール パソコン入力
CN・RN リハーサル荷物のチェック表 パソコン入力
CST おもて進行パソコン入力
メリーゴーランド、カンタータの待機・誘導係きめ
誘導係用プログラム作成
HK おもて進行パソコン入力
A おもて進行パソコン入力
KG おもて進行inとOutの書き出し
G おもて進行inとOutの書き出し
今回の発表会は、・・というか、例年通り、今回も芦塚先生が長年温めてきた新曲を幾つか演奏します。
多分、これも恒例の本邦初演になると思います。
曲名はお楽しみに・・・!
ヒント: その内の1曲はシェイクスピアの真夏の夜の夢に関係のある曲です。
そう言えば、オケ・リハーサルの時に、芦塚先生がオケの指揮をしながら、片手に箒を持って踊っていましたよ。
どういうこっちゃ???
芦塚先生、おかしくなっちゃった???
そろそろ、歳だモンね・・・・?!
purcell chaconne C.wmv
発表会当日の演奏です。聞いてください。
Lullyが手にしているのは指揮杖と言います。
答えは、発表会の時に、幕間のお話で・・・・!
Henry PurcellのChaconne g moll
purcellchaconne g.wmv
箒の話の曲とは別に、今回の発表会の新曲としては、Henry PurcellのChaconneのg mollも予定しています。
教室では、芦塚先生が若い頃から所有していたpurcellのoriginal版のスコアーと、高名なイギリスの誇る作曲家であるBenjamin Brittenが校訂した版を比較検証して使用しています。
しかし、このchaconneのBritten版は、ブリテンが、「青少年のための管弦楽入門」で見せたように、purcellのRondeauのイメージ(インスピレーション)によって、新たに作曲した擬古典版(Brittenの作曲)ではなく、当時の慣習に従って演奏したものを、現代風に正確に楽譜に書き表すと、こうなる・・・という実際の演奏を、忠実に楽譜に書き表した(再現した)、所謂、演奏譜というものなのです。
こういった楽譜の事は、一般的には、作曲や編曲とは言わないで、本来はRealisation(具体化、現実化)と言います。
しかし、Britten版では、Edited by ・・・となっています。所謂、編集という事でしょうか??
という事で、Britten版には、著作権が掛かっています。
う〜ん???
しかし、上記の様な理由で、original版で演奏しても、Britten版で演奏しても、古式豊かに演奏すると同じ演奏になってしまうのですよ。つまり、正確に古式豊かに演奏すると、Brittenが書いた譜面のようになるのですよ。
だから、今更、Britten版の著作権と言われてもね〜ぇ???
発表会で子供達が演奏した、henry purcellのchaconne ハ長調は、originalの譜面を底本にしています。
八千代のコンサートでは、芦塚先生が校訂した芦塚陽二版という演奏譜(Realisation譜)を使用して古式豊かに演奏する予定です。
芦塚先生は「私は別に著作権料はいらないけれどね!」と言っていましたがね。
baroqueの演奏譜について
baroque時代は当時の慣習的に、楽譜に書かれている音符と実際に演奏される音符やリズムは違う事が多いのです。それを、現代の音楽家用に実際に演奏される音符やrhythmで書いたものが、校訂版になります。
譜例:originalの版
上の楽譜はoriginal版の、最初の5小節目から8小節目迄のスコアーです。
次はBritten版の同じ箇所です。
譜例:
最初の小節の3拍目の裏の8分音符や次の3拍目の8分音符はsostenutoで膨らますように演奏します。しかし、次の8分音符は16分音符に書き換えられています。つまり、鋭くskipして弾きます。しかし、このBritten版も演奏譜としては話半分くらいです。
本当は次のように演奏します。
譜例:芦塚陽二校訂版
1小節目、2小節目の3拍目の裏の8分音符はsostenutoでたっぷりと弾きます。それに対して、16分音符はもっと鋭く、あたかも32分音符のように、次の音に引っ掛けて演奏します。
譜例のように、skipの音符間には休符が入ります。
purcellのchaconneでは、「現代の作曲家が書いたのでは?」、或いは「Brittenがアレンジした譜面では?」というような、とても近代的な響きがするpassageが時々あります。
でも、それは、Brittenのアレンジでもなく、purcel本人が、長、短の両調性のためではなく、教会旋法というもっと古い時代の作曲法を、時々混じえて作曲したからなのです。
そのために、長短の両調にすっかり慣れてしまった私達には、寧ろ逆に新鮮に聴こえてしまうのです。
譜例:
このcelloのpartとviolinのpartの長Z度のぶつかりは相当練習しないと、ついつい怖がって逃げてしまいます。
最初はBrittenが、「擬古典で作曲したのかな?」と思ってoriginal版を調べてみたのですが、なんとoriginalもそのように書いてありました。
驚きです。
次の譜例のpassageは100小節目に突然出てくるAeolian7度↓@のファの音の話です。
Aeolianの7度とは、短調の導音、所謂、7度の音が半音下がったなのですが、その音を正確に取るのはとても難しいのです。
通常の場合には、Aeolian7は、事前、事後の準備を伴って出て来なければなりません。しかし、古い時代には、旋法として出てくる時には、脈絡なく、突然出てくる事がよくあります。
つまり、Aeolianの7度が調性の中で、出て来る場合には前後関係で、その音のpitchが決まります。しかし、旋法として突然出て来る場合には、その7度の音は倍音律上の音になるのです。しかし、その後で、対斜として、次の導音の音が来ると前のファの音は調性上の音として奏さなければならなくなるのです。それとも、導音を純正調で取るか???
このpurcellのchaconneの場合もそのように前後の準備(予備motion)なしに、突然にファの音が出てきます。
)
しかも、この曲の場合には、Aeolianの7の音の後に、他のpart(violaと第二violin)でファ#の音が出てきます。
異声部間で元の音から派生音(臨時記号の音)を使用するのは、とても演奏困難で、和声学的には「対斜」(querstand)と呼ばれる、やってはいけない禁則になります。(古い時代、旋法の時代には、まだその禁則はありませんでした。)
やっていけない事を正確にやる事は、とても難しいという事は分かりますよね。
という事で、何度も「そのファの音は・・!とか、「ファ#が低い!」とか、抜き出し練習をしなければなりませんでした。
絶対音ではなく、純正の響きなのでね。
平均律というのは音を均等に狂わせるという方法です。
しかし、純正調で正しい音を出そうとすると同じファの音でも、和音の組み合わせで、無数のファの音が存在します。
正確に演奏するのは、難しいのですが、正確に狂わせるのは、もっと難しいのですよ!!
そういった微妙な音の違いは音楽大学では学べません。もう既に年齢的に遅いのです。正しい音感を学べるのは子供の内だけなのです。
よく知られている絶対音の習得と同様に・・・
音楽の基礎(耳)は子供の内に作られるのです。
芦塚先生が音楽大学で指導するのを諦めて、子供を指導するようになった理由の一つはそこにあります。
まだ、一般の音楽界では知られていないbaroqueと言うジャンルも、詳しく研究していくと、とても新鮮な驚きがあって、面白いですよ。
こういったbaroqueには、baroque特有の演奏のstyleがあるという事で、その時代の時代特有の演奏法(様式)を取り上げて、説明していくと、その時代の他の作曲家の作品も同じ水準(Niveau)迄、自分一人の力で持って行く事が出来るようになります。こういったlessonの方法を芦塚先生はmaterialによる指導法と名付けて、個人のlessonやオケ練習等で子供達に説明をしています。baroqueや、古典派の演奏法には、こういった特徴があり、こういった技術が必要なのだと、或いは、この作曲家はこういった作風でこういったstyleで演奏するのだ・・・と、いう風にです。
一つの曲を丁寧に、詳しく分析していくと、1曲を理解するのに、大変な時間と労力が掛かります。
しかし、それをmaterialとして捉えていくと、次の曲では、新しい曲であるのにもかかわらず、殆ど曲の8合目辺り迄を生徒が自主的に練習が出来るようになります。という事で、次のlessonは、いきなり8合目迄しあっがった状態からlessonを開始する事が出来、先生の負担も減って、lessonの大変な時短に継っていきます。
これも芦塚メトードの基本的な考え方なのです。