弦楽器の買い方についてのアドバイス
ヴァイオリン購入のポイント


器を始めようと思ったときに、楽器を買うのにいくらぐらいかかるかというお話で、弦楽器、中でもヴァイオリン程値段の差がある楽器は無いでしょう。以前27億というストラディバリを見せてもらったことがあります。しかしやはり木製でヴァイオリンの格好をしていましたよ!(仮に総金無垢で作ったとしても、そんな値段にはなりませんね。)この法外な値段には楽器本来の値段の外に、美術品としての値段や、投資(楽器は土地や金よりもその価値が安定していることによる)付加的な価値によるものです。音楽家にとってははなはだ迷惑な話です。
そういった問題外の話はともかくとして、何を持って弦楽器の値段が決まるのかは、「ヴァイオリンのよもやま話し」に少しだけ触れておりますので、そちらの文も読んでみて下さい。

ヴァイオリン購入のポイントは、大人の方とお子様では少し状況が違うかもしれません。しかしいずれの場合においても共通することは、ヴァイオリンは生き物であって常に、メンテナンスが必要であるということです。購入した楽器店に高い技術を持ったメンテナンス・スタッフが常駐していることがとても大切です。基本的に楽器屋は自分の所で売った楽器についてはメンテナンスをしますが、他所で買った楽器についてはメンテナンスをしないところが多いようです。まして、保障となると何処で買ったかが大事な要素になります。
楽器を買った失敗例はよく耳にしますが、お話しすることでもないでしょう。

良い楽器を持っていたにもかかわらず買い替えざるを得なかった人もいます。おじいさんが昔弾いていたヴァイオリン、或いは・・・・。
楽器はある程度演奏され定期的にメンテナンスを受けることによって、品質が保持されます。一度も取り出されることが無く、5年10年と経つと、楽器は思ったよりも激しく痛んでしまいます。再び取り出して演奏しようとすると、修理代の方が新しく買うより高くつく、ということになってしまいます。折角良い楽器を持っていたとしても、宝の持ち腐れではなく、宝にもならなくなってしまいます。


本題に戻って、「どの程度の楽器を買ったら良いのか?」ですが、大人の場合は楽器のサイズは関係ありません。上手になったら買い換えるのか、最初から生涯の楽器を選ぶのかーということかもしれませんね。私達の教室では「どうせ、趣味だから一番安い楽器でもいいんだ。」と言われてた方も、「あれ・・?俺って意外と上手いかも・・・!」と、1年も経たないうちに買い換えられる方が殆んどのようです。上手くなるとどうしても良い楽器が欲しくなるみたいですよ。これは例外なく・・・・・!

小さいお子様の場合は、ちょっと話が違いますね。何故なら下取り価格は約束されたものではなく、楽器の痛み具合によって査定が変わってくるからです。私達の教室では子供達に楽器の手入れの仕方や扱い方も指導しています。楽器を大切に出来ない人が、楽器がうまくなることはありえませんからね。アメリカの映画で学生が教科書に腰を下ろすシーンがありましたが、本を何世代にも亘って伝えていくドイツ人などにとっては、我慢できないシーンです。私も音楽家であるとすれば、楽譜等は丁寧に扱いたいものです。車などでも「下取りに出すんだから、どうでもいいや!」と汚れたそのまま下取りに出すのと、ピカピカに磨いて出すのでは業者の心象が大分違ってきて、そのまま下取り価格に反映するそうですよ。
私どもの教室では、「楽器の扱い方も含めて音楽の教育」と考えていますので、子供たちは、ヴァイオリンの経験年数や本人の加齢に伴って、楽器の扱いも上手になってきます。年齢が幼く、経験も乏しい間は、どうしても傷つけてしまうこともあります。しかし、それを怖がって楽器の管理を全て親御さんがやってしまうと、楽器を大切にする心が育ちません。演奏技術があがり楽器の管理が出来る年齢になって、いきなり「大事にしなさい。」といってもすぐにできることではないのです。
分数のヴァイオリンの場合、値段はフル・サイズの楽器の1/4位の値段になります。30万の分数楽器は120万位のフルサイズの楽器に相当します。何故なら、分数楽器は1年ぐらいを目安に買い換えられるからです。ですから「売る」という発想よりも「レンタルする」という考えに近いと思います。先ほどお話したストラディバリ等も何世代にも亘って、大切に引き継がれてきたのです。弦楽器はそういった考え方をします。楽器を大切に扱えるようにする事、それを教えるのも私達音楽家の役目だと考えています。