専門職、バイト、派遣社員
仕事というものは俗に言うバイトと、専門職というものが有ります。
バイトで要求される人材とは、特定の人間が必要なわけではなく、誰でもよいからそこにいてくれればよい、誰でも可能な仕事なのです。ですから、そこで要求される技術は、わずか1日、2日の簡単な研修程度でマスター出来て、実際の仕事に付く事が出来ます。
分からなければ先輩に聞けばよいし、自分が望まないときには休む事も出来ます。自分の都合で働く事が出来るので別に仕事に対して目的がある人や、責任のある仕事をしたくない人にとってはこの上ないよい仕事ではあります。
勿論、バイトでは直属の正社員がいて仕事の仕切り(バイトの人の時間の調整や、仕事のノルマなどの責任のある作業)をこなします。
バイト程度の仕事であれば「研修費」として報酬を出す大手の会社は多いでしょう。バイトの研修のための1日2日にかかる人件費は、大手の会社としてはそれ以降の実績を考えれば相殺して損は無いからです。
それに対して、専門職というものがあります。
勿論専門職というのはそれだけの技術を要する職業です。また、資格を必要とする専門職も多数あります。
専門職とは勿論その道のプロを意味します。ですから会社が専門家を雇用する場合は、出来る事に対しての報酬となります。この場合には研修などと言う言葉自体が成り立ちません。もし会社が経営的に独自のスタイルを持っていたとしても、その説明は面接のときに口頭で済ませる程度の事でしょう。それですべてが理解できないと、その道のプロとは呼べないからです。
音楽の世界に限らず、いずれにしても専門職とは、資格に合格してから、或いはそれだけの技術が出来てから初めて給与がもらえる職であります。もしも何らかの事情で研修をしなければならない場合には、研修生が技術を習得するまでの期間、正社員の中でも指導の出来るベテランの社員が指導を続けなければいけません。これは正規には実収入を上げているはずの正社員が、時間や労力を研修生の指導のために使用するわけですから、会社側の損得からみた場合、大きな損失のマイナス要因になります。それでも会社側が若手の社員を指導するのは、研修生が技術を身に着け、いずれ会社の役にたってくれるという将来性があるからにほかなりません。
また、専門職とバイトの中間のような、派遣社員というものも有ります。最近では音楽の世界でも(ブライダルやイベントの演奏などは)現実に派遣制度を取り入れたプロモーションが増えつつあります。派遣社員は、専門知識を持ったバイトとでもいうことができるでしょうか?
この派遣というお話自体は、あまり音楽を指導する立場の私達とは関係なさそうに思われます。特に、既にいくつかの教室などで指導されているベテランの先生の方達には・・・。
しかし、本当はこの派遣のお話は我々にとっても密接に関係がある現実的なお話なのです。
音楽教室と経理(会計)
音楽教室を経営していたり、或いは個人の音楽教室で一人だけで教えていたりしたとしても、収入を得ている以上、国民の義務として税金を納めなければなりません。
音楽大学の学生などの場合には、「自分は学生だから、納税の義務はない。」と考えている人もいるようですが、たとえ学生であっても、家庭の主婦であったとしても、収入がバイト収入としての限度額を越した場合には、当然納税の義務が起こります。納税義務になる金額が幾らからかは、年度によって変わりますので、正確な金額は調べてみてください。(私の記憶上の金額はかなり古いものですから、参考にはなりません。)
と言う事で音楽を教えている人達は、納税をするためにはある程度会計の知識も必要になります。
当然、経理が得意な人は自分自身で経理の仕事もするのでしょうが、私は経理などのこまごました作業(特に勘定科目の振り分けなど)が苦手なので、専門の会計士にお任せしています。
しかし通常は、規模の小さな音楽教室で会計業務を行う場合、普段の経理だけをしっかりやってさえいれば、会計の専門家と契約する必要はなく、納税のときに出来上がった経理のノートをチェックしていただくだけでよいのです。もう少し生徒数などの規模が大きくなっても、月一日、二日だけの契約で派遣社員を雇うだけで充分です。
会社にとっては、その役職の部署が1年を通じて常に必要でない場合には、派遣社員を使ったほうが、へたにやる気のない正社員を教育するよりも、よっぽど仕事は進むし経費もずっと少なくて済むのです。
いずれにしてもこのお話は自分で生徒を指導したり、先生達を雇って音楽教室を経営する立場でのお話ですね。それでは、お話しを元の雇われる立場に戻して・・・。
研修について
わたしたちの教室では、研修期間中は、聴講で気づいたことや質問などを書いて提出していただき、それに対するアドバイスを行うと同時に、着眼点があっているか、どこまで見れているか、などの総合的なチェックをチーフインストラクターが行います。チーフにとっては自分の生徒だけを教えている通常のレッスンの倍の労力になります。一般的な考え方に従うとすれば、指導料をいただかなくてはならないことですが、教室の特殊性や芦塚メトードのすばらしさをぜひ研修生の方に理解していただきたいという思いから、指導料は一切いただいておりません。また、メトードが閉鎖的になる事を防ぐために、レッスンの聴講は一般の先生方にも制限してはいません。事前の連絡があればどなたでも聴講可能です。しかし一般の方が聴講に見えられたからといって、聴講料をいただく事もない代わりに、教室が一般の先生に交通費を払ったり研修費を払う事は、(バイトの世界ではないので)絶対にありません。
「研修の期間はどれくらいですか?」こういった質問をよく耳にします。
この質問は切実な問題だとは思いますが、いかんせんそれはあなた自身の問題で教室の問題ではありません。それは研修に来る方が質問することではなく、こちらが聞きたいことです。「あなたはどのくらいの期間で技術を身につけてくれるの?」
技術職、専門職というものは、(バイトではないので)決まった期間研修を受ければそれで良いというものではありません。実際にできるようにならなければ研修期間は終わりません。逆に言えば、技術を習得できればすぐにでも先生になることができます。要するに本人の努力次第で、期間は短くも長くもなります。仕事とは、自ら進んで技術を身につけなければ、誰も認めてはくれません。ただ時間分だけ授業を受ければよいとか、出た宿題をいやいやでもやればいいといった学生の考え方では、とても仕事をするということからは程遠いでしょう。
音楽教室の種類
当然、音楽教室の先生も技術職ですから、専門職になるはずです。
なるはず・・・というのは、音楽教室には2種類の教室があるからです。
音楽教室には、直ぐに自分の思うまま、感じるままに自由に教えられる教室と、教室自体にひとつのシステムや(カリキュラム等)があって、全ての先生がそれに従って指導している教室があります。後者のような教室で先生になるためには、その教室のメトードを覚えなければなりません。
基本的に音楽教室は、その二種類に大別されますが、実際には、大手の音楽教室ではその中間を狙って、それぞれの会社に独自の先生教育のシステムがあり、先生の雇用条件や昇給も、指導グレードの試験の合否に拠る・・・という方式をとっています。
紛らわしいのは、こういった大手の教室の場合には、いわゆるホーム教室といわれるものが別にあり、看板は大手の会社名を掲げているけれども、実際にはその会社の協賛の個人教室、或いは個人経営の楽器店であったりします。
大手会社直営の教室では、教材や指導に関してもかなり厳しくシステムを守ることを要求されますが、同じ会社名を銘打っていても、個人教室の場合には教材や指導法に関してはその教室のオーナーしだいで(完全に自由にとは行かなくとも)それほどうるさくありません。
ですので、自分の指導に自信のある先生や、教室に介入される事を望まない方は、そう言ったある程度自由の利く教室を探されるとよいと思います。
教室の経営的な立場から見ると、実力のない先生に沢山の生徒をまわして一気に生徒が減ってしまうと、教室経営に大打撃を受けてしまいます。一般的に多くの教室では、先生の実力を確かめるために、最初は2,3人の生徒しか回しません。そして、その先生が生徒となんの問題もなくレッスンを続けることが出来るかを見ます。半年間ぐらい様子を見て問題がなければ、教室サイドも徐々に生徒を増やしますが、基本的には、先生は自分で生徒を増やす努力をしていかなければならないのです。
ステータスな就職
女性の場合には音楽大学生のうちにいろいろな会社の指導グレードを取って、音楽大学卒業と同時に、あたかもそれがステータスであるかのように大手の音楽教室を選んで勤めます。
しかし不思議な事に、その人達の殆どが3年以内に辞めてしまいます。
それは何故でしょうか?
その事については、ホームページ上の別のページに詳しく書いていますので、そちらの方を参考にしてください。
結論的に言うと、「子供を教えるのは簡単だ。バイエルやブルグミュラー等の簡単な教材は、勉強する必要もなく、簡単に教えられる。練習をしてこないのは、親がついて練習させない、協力が無い、つまり親が悪いのだからしょうがない。」そう思っている間にいつの間にか片っ端から生徒が止めていって、教室のオーナーには怒られるし、かといって、実際に処、何をどう改善したら良いのか全く分からない。やがて子供を指導する事それ自体に自信がなくなって、「私はやっぱり演奏に向いていて、教えるのは向いていないのだわ。」と考え始めるのに、早い人では1年?ちょっと根性があったとして2,3年が限度なのです。
退社する女性の理由の大半は寿退社ですが、実際に結婚する人はまれです。それは口実にしか過ぎないのです。
音楽大学生は音楽社会をほとんど知りません。ソリストやスタジオミュージシャン、学校の先生、音楽教室の先生、以外の職業を知りません。しかし、ソリストとは、演奏会を開催することを意味しますが、演奏会をしてもそれが生活できるだけの収入に満たなければ、職業として認められません。お金の事だけを考えるとしたら、音楽に関する仕事で、もっと確実に大きく稼ぐ方法はいくらでもあります。そういった一般的な社会常識をあまりにも知らなさ過ぎます。
音楽教室は教育そのものです。子供達に音楽のすばらしさを教える事も、人生の意義を教える事もあなたの腕にかかっているのです。子供があなたに信頼と尊敬の眼差しを向けるとき、子供を指導する事の本当の意義と価値を見出す事が出来ます。そしてそれはあなたの人生の生きがいにもなってくれるでしょう。
あなたはステータスとして就職を希望しますか?それともお金が欲しいだけですか?或いは生きがいとなる仕事をさがしているのですか?それが曖昧なままいくら面接をしても、自分にあった仕事は絶対に見つかりません。
時給と月給の違い
音楽を勉強する人達が、本当に現実離れをしていると感じるときがあります。
それは月給に対して話をするときです。月給はというものは会社員に対して払われます。会社員という事は正社員という事です。例えば皆様が一番分かりやすいように大手の楽器店で言えば、売り子の女の子達は正社員であり給与所得です。労働時間は最低でも9時に出社で、5時、(7時)退社です。ウイークデーは必ず出社しなければなりません。当たり前でしょう?会社員だもん。
では大手の会社で教えている先生は・・・?
勿論、会社の社員でも何でもありません。スーパーのレジ係と同じパートなのです。当然給与は無く、時給です。保障は何もありません。保険は国保です。
大手楽器会社の雇われ先生の場合には、そこで教えているときにも、或いは自宅で個人教室をしているときにも、発表会などは全て楽器店がしてくれます。それを年若い先生は「楽器店が先生に雑用をやらせないように、大切にしてくれている。」と感謝していました。でも発表会の運営企画を先生が自分自らやると言う事は、いつでも独立出来るということです。より有利な楽器店を自由に選ぶ事も出来ますし、自分の企画で発表会をすることも出来ます。先生になにもさせないと言う事は、独り立ちをさせないと言う事なのですがね。
当教室では
音楽を指導するという事は、一流の演奏家になる事と同様に、(ある意味ではそれ以上に)難しいことなのです。ピアノが弾けると言う事と、ピアノを生徒に指導すると言う事は全く違った世界になります。
現に私達の教室のご父兄のかなり多くの方が音楽大学を卒業されていて、自宅でもピアノの先生をなされています。また現役で演奏活動されている方もいます。家庭では同じようにバイエルやブルグミュラーを教えている人達です。
その人達が、自分達が嘗て学んできたメトードではなく、芦塚メトードのシステムを自分達の子供達の教育に、と教室にいらしています。
或いは別の一般の教室で子供がすっかり音楽を嫌いになってしまって、「何とかして欲しい。」という事で教室に見えられた方もたくさんいます。
一度すっかり音楽が嫌いになってしまった子供達にどういうふうに教育したら、音楽を好きになってくれると思いますか?
とにかく数を教えて早くベテランになればよい・・・?
でも本当は数を教えたからと言ってベテランになれるわけではありません。学校でもいじめや学級崩壊が起こっている教室はむしろベテランの先生のクラスの方が多いのです。
医者の世界では最低3人は殺さないと一人前にはならないなんていいますが、殺される方の3人の身になったら、たまったものではありませんよね。
一人の落ちこぼしも出したくない・・・・それが本当の教育ではありませんか?
ピアノの先生が最低勉強しておかなければならないこと
ピアノの先生であれば、まずは最低バイエルとブルグミュラー全曲とせめてソナチネの一巻2巻程度は暗譜しておいてほしいものです。
子供の表情や指使いなどを見るのに、楽譜にしがみ付いていては何も見れないでしょうし、正しい判断はできませんからね。
某有名音楽大学の卒業生の方たちが、これまでに多数面接に来ましたが、ト音記号やヘ音記号、全音符や四分音符などを五線紙上に書くテストを行ったところ、いまだに正確に書けた人は一人もいません。日本の音楽教育の現状を垣間見るようで、情けない限りです。皆、自分が書いている記譜が正しい書き方であると思い込んでいました。私の師匠のPrinngsheim先生やGenzmer先生などは、生徒が自己流でト音記号を書いたりすると、烈火のごとく怒っていましたがね。私達は小学校で音符の書き方や音部記号の書き方など、結構正確に書き方を教わってきましたよ。勿論ト音記号の書き方など、音楽大学で習う事はありませんがね。
必要経費と取り分
当教室は大手とは違いますので、どのように宣伝したとしても宣伝で生徒が集まってくる事はありません。教室も少子化になる以前100万近くをかけて宣伝を何回もしましたが、結局のところ、一人も教室には入ってきませんでした。私達の教室にあこがれてくる人は皆、数人の生徒を教室から預かったその父兄達の口コミに拠ります。つまりその父兄に気に入ってもらえないと生徒が増える事はありえないのです。生徒のレッスン料が平均8000円ぐらいとして、もし先生の歩合が交通費込みの50%であるとしたら、16万円になるには、約40名教えなければいけません。40名というと非常に多そうに思えますが、実際のレッスン時間は30分から1時間ですから、平均40分として、わずか週当たり20時間になります。実際には発表会やオケ練習などの手伝いなどで臨時の収入が有りますので、40名にはならなくとも16万ぐらいにはなります。しかし、それがいつからかというのはあなた自身の経営努力によります。ちなみにある先生は、大学を卒業と同時に数件の音楽教室で教え始め、(大学在学中から私達の教室にインストラクターの勉強に来ていました。)卒業と同時に1年もたたずに70名ぐらいの生徒を教えていました。勿論一人当たり平均8000円としても半分の取り分で4000円の約80名ですから、発表会などの付帯収入を入れると平均40万以上の収入にはなりますよね。
彼女の例はともかくとしても、最低の収入としてもこれを一般の会社と比較してみると、(本当は一般の会社では5時退社ということはありえませんが、9時ぐらいの退社では残業手当は付きません。僕の友人がよく言っていたのは、5時は早退、9時になってやっと退社で、12時になって初めて残業というのだそうです。)
一応建前で5時退社ということにして、週6日とすると労働時間は48時間になります。ピアノの先生が同じ給与を得るには、実働時間は半分以下ですみます。これだけの違いが、これが専門職の強みなのです。
音楽教室にやってきて、歩合の事を聞いて、歩合の%が少ないとか、歩合そのものに不満を抱く学生の方もいますが、これは多くの場合、指導される先生の取り分の残りが教室の実収入になるという勘違いから来ているのです。
その点、もう既に現場で働いている方達の多くは、自宅でも教えたりしているために、ある程度は教室を経営していくうえで必要経費がどれくらいかかるかを理解出来ます。
給与計算は本来、収入から必要経費を差っぴいて、その残りを歩合にするのが正しい計算なのです。しかし、大手楽器店等は、教室経営は顧客を広げるためのサービスの一環であり、教室自体が収入をあげる必要は本来的にはありません。(勿論、そうは言っても、先生が給料を上げようと、グレードの試験を受験すると、そこには受験料が掛かる等等、いろいろと細かく先生からも徴収している事は事実ですが)楽器店などでは、教室自体は赤字経営でも、楽器が売れれば充分にペイができるのです。大手の教室には、楽器店の顧客を増やすという別の目的が有りますので。
個人教室の場合には、教室そのもので、教室の運営をしなければなりません。では、教室を運営していく上でどれぐらいの必要経費がかかるのでしょうか?
例えばあなた自身が教室を経営しようとしても、同じだけ必要経費が掛かるのです。
たとえば、教室には家賃を払わなければなりません。勿論教室代には、そのほかに電気代や水道代、(水道は使わなくてもトイレには行くでしょう?)ガス代も必要です。
教室では楽譜代やCD代だけでなく、いわゆる箱物と呼ばれる設備費が掛かります。ピアノやメトロノーム、クーラーなど、考えられるだけ考えてみてください。チラシやお知らせなどを生徒さん方に配るには、コンピュータやプリンタ、ファックスなども必要ですよね?わたしたちの教室の事務所で使っている業務用のコピー機は、450万以上します。毎月8万以上のお金をコピー機に払っています。しかも紙代トナー代はまた別にかかります。
ピアノは減価償却費となりますので5年ぐらいで還元しなければなりません。100万掛かったとしたら、月1万7千を計上しなければなりません。(税務署で定まっているので)そういったものを全部払った残りが教室の収入になりますが、いったい幾らの収入が残るとお思いですか?
(ちなみに、個人の教室で自宅を教室として使っている場合には設備費等は掛かりません。生活の中の備品で充分だからです。)
楽器も楽譜も売らない個人の教室の場合、教室は金銭的にはあまりメリットはないのです。
ある大手の会社の、ピアノの先生の求人広告を見ました。週4日、5日勤務で生徒数が20名ぐらいの若い先生の手取りが15万とか20万とかなっていました。
しかし、そのチラシの下の方に小さく計算(内訳)が書いてありましたが、そこにはひとつのトリックがあります。つまりリトミックやエレクトーンなどの集団教育の収入を個人レッスンの収入と合算しているからです。
リトミックは2人、3人の先生であっても20人30人の生徒を同時に教えるわけですから、単位時間の収入が個人レッスンとは全く違います。一人3000円の月謝であっても30人で一時間だったら、単純に9万円の収入になるのです。時給に換算すると、3人で教えたとしても、単位時間当たりの一人の稼ぎは7500円になります。ピアノの場合には月謝が8000円だったとしても、月4回だから時間2000円の稼ぎにしかならないのです。この落差は非常に大きいのですよ。
給与の%についてのトリック
就職面接に来られる音楽大学生の方の多くは%の数字のみを気にする傾向にあります。
ですから、面接に来られた方が「他所の教室でずいぶん条件のよい話を聞いてきた。」という言葉を鵜呑みにして、「ああ、そうですか・・?」と、よくよく聴いてみると、%のマジックに引っかかっている方がずいぶんいます。例えば、交通費は全額支給といっても、県内のみであったりすると、自宅から教室まで50%の方が率がよい場合もあります。
仮に45%であったとしても、交通費支給と、60%の交通費無しではどちらがよい条件でしょうか?勿論、自宅からの距離によります。長期に教えたい場合には引っ越した方が得な場合もありますよね。
ある教室ではもっと面白い条件がありましたが、それは教室の必要経費を差っぴいた残りを先生が80%で教室が20%と言うのです。教室にとっては、それはいい条件ですねえ・・・。
音楽大学生は80%と言うとそれだけで認められたと思ってしまって喜ぶのだそうです。
ハッ!ハッ!ハッ!ハッ!
教室は楽器によって、少しずつ教室自体の運営形態が違います。ヴァイオリン教室とピアノ教室ギター教室では月謝や教材費などがずいぶん違うのです。ですから異種楽器の人のお話は参考にはなりません。
芦塚音楽研究所の
ダブル・ティーチャーズ・システム
本来、報酬と言うものは出来た事(やった事)に対して支払われます。
芦塚音楽研究所の教室では、芦塚メトードで生徒を指導するように義務付けられています。
しかしながら、芦塚メトードを習得してからでないと、指導出来ない、或いは給与は払えないと言う事では、それもまた酷な話です。本当に芦塚メトードを理解できるように(使いこなせるように)研修するとすると、先生希望の方は、無給で何年間も勉強しなければなりません。
ですから私達の教室では、いくつかの方法論で先生方の負担にならないように配慮をしています。最も理想的で楽な芦塚メトードの習得法は、現在実際に教室の中高生の生徒達がやっているように、子供達が中学生になったぐらいの時期から、東京の事務所でメトード(指導法)の勉強や基礎的なコンピューターの使い方等を勉強し始めることです。オケや室内楽の練習など、先生のアシスタントをするときにも、あらかじめ先生に指導のポイントなどを手ほどきしてもらう事によって、間違いなく自信を持って後輩の面倒が見れます。そういった経験を数多くつむ事によって、演奏や指導に慣れて行きます。
しかしながら、芦塚音楽研究所の卒業生でない方の場合には、メトードの習得を型通りにレクチャーするとなると、先ほどもお話したように、メトードの習得に何年も掛って現実的ではありません。
でも教室に訪れてくる生徒、父兄の方々の多くの方は、理想的な音楽教育と言う事で、私達の教室のメトードを求めて訪れてこられる方がほとんどなのです。そういった方にとっては、一般の先生の指導法は耐え難い教育となります。
その双方に納得の行く教育法は無いだろうかという事を考えて、ダブル・ティーチャーズ・システムという方法論を開発いたしました。
一日も早く講師になりたい方のために、研修期間を設け、まずインストラクターの先生方のレッスンの聴講から始めます。少しずつ出来る所から指導に実際にアシスタント的に参加していただき、子供の指導や扱いに慣れる所から始めてもらいます。また、生徒の教材作成や事務作業(パソコン入力)、などお手伝いをしていただくことでも、時給(この場合はノルマ給ですが)をお支払い出来るようにしています。
研修がある程度済んで、実際に生徒を指導する場合にも、先生直属の担当の先生が、隔週か、隔隔週、或いは月一でダブル・ティーチャー(実際に担当の先生が同席する)か、若しくはビデオ撮影によって生徒の指導の仕方を(後日)指示します。このように直属の担当の先生と二人で一人の生徒を指導する方法を、当教室ではダブル・ティーチャーズ・システムと呼んでいます。
出来る限り一人の落ちこぼしも無いように、そして経験に裏打ちされた実績のある優れたレッスンを新しい先生も出来るように考えられた方法です。
つい最近にも、遠い地方の先生から生徒のことで相談を受け、レッスンのビデオを送ってもらいました。最初に相談を受けたときの話では、小学校1年生の女の子で、親はレッスンに来ないし非協力的、子供には学校が終わったらレッスンまでの時間を図書館でドリルをやって過ごさせ、一人でレッスンに通わせている。子供は先生をはぐらかすような会話しかできず、最近は言い訳ばかりするようになり、全くレッスンに集中できないのに親はコンクールに出そうとしている。・・・・・という内容でした。話を聞いた段階で私たちは、きっと建前や世間体を最優先にする愛情の足りない親で、子供が大人たちを信じられないようになってきていて、そのまま放っておけば心身症になりかねない危険な状態の子供を想像しました。「それは緊急を要するから早急にビデオを送りなさい。」と指示をして、その先生がその子のレッスンをしているところをビデオにとってもらって送らせました。ところが、ビデオを見てみるとその想像とは全く違う子供が映っていました。とても明るく頭がよくてかわいい女の子です。こんな子がうちの教室に来てくれればいいのに・・・というくらいうらやましい限りの生徒でした。レッスンの状況は、先生の教材研究不足と指導力のなさの為に、子供がピアノを弾くのに飽きてしまい、集中できないだけでした。親も子供も全然問題なく、ただレッスンがつまらない、それだけのことでした。先生は自分では一生懸命やっているつもりなので、それが全く見えずに、親と子供のせいにしているだけなのでした。このケースでは、教室のアドバイスによって先生が自分の誤った視点を反省し、教材研究などをやり直すことによって、子供が楽しくレッスンに乗ってこれるように配慮をすることで、問題を克服できました。
このように、ダブルティーチャーズシステムでは、経験の少ない先生でも、誤った視点や指導案などを、ベテランの先生がアドバイスすることで立て直すことができるのです。
今日の世の中では、教育は崩壊し、親が子供を殺し、子が親を殺す、先生が生徒をいじめ、いじめにあった子供が自殺する、塾や親の抑圧に耐えられず自傷行為をする子供、引きこもり、自閉症・・・・・・すさんだ教育の世界の中に子供達は身をおいています。
にもかかわらず、私たちの教室で育った生徒には、ひきこもりや自閉症などの、心を病んだ子供は一人もいません。それは、音楽を心の支えとして教育し、少しでも子供の心に悪い影響のある出来事や環境には事前に対処し、思いやりの心で思いやりの心を育てているからに他なりません。教育とはただピアノの技術を教えるのではないのです。その子供の一生を左右する重大な一大プロジェクト、それがなの教育です。